社内異動でベトナムに赴任した駐在員は、その多くが本社とベトナム現地法人の両方から給与を受け取ります。
今回のコラムでは、ベトナムでは全世界所得を申告する義務がある中、1年を通じてどのように申告・納税するのか具体的に説明します。
なお赴任初年度が暦年で183日に満たない場合は、第1課税期間を入国日から連続12ヵ月間として、第2課税期間を暦年としますが、原則は暦年(1/1~12/31)が課税年度となりますので、本コラムでは1/1~12/31の年間フローを説明します。
申告に関する基本ルール
ベトナムでは毎月あるいは四半期ごとに個人所得税の申告・納税を実施した上で、1/1~12/31分の年次確定申告・納税を行います。月次・四半期申告では、日本など本社から支給される給与(以下、ベトナム国外所得)と、ベトナム現地法人から支給される給与(以下、ベトナム所得)を分けて、それぞれ所定の申告フォームで申告しなければなりません。納税手続きも別途に行います。年次確定申告・納税の際は、ベトナム国外所得とベトナム所得を合算しまとめて手続きします。
| 月次・四半期申告(納税) | ||
| 対象所得 | ベトナム国外所得 | ベトナム所得 |
| 申告フォーム | フォーム02/KK-TNCN | フォーム05/KK-TNCN |
| 申告タイミング | 四半期 | 月次もしくは四半期 |
| 年次確定申告(納税) | |
| 対象所得 | 全世界所得 |
| 申告フォーム | フォーム02/QTT-TNCN |
月次申告or四半期申告(納税)
ベトナム所得に対する個人所得税申告・納税は上述の通り、月次か四半期いずれかになります。原則は月次で申告・納税することになりますが、所定条件を満たす場合には四半期ごとに申告することも可能です。なお駐在員事務所には、税務局に四半期申告を希望するオフィシャルレターを提出する場合を除き、月次の申告のみが認められています。
所定条件:
付加価値税(VAT)を四半期申告・納税できる条件*を満たすこと
*新設企業の初年度、あるいは前年度の企業の売上が50,000,000,000VND未満
各手続きの締め切り
月次・四半期申告(納税)および年次確定申告(納税)の締め切りは以下の通りとなっています。
| 月次申告・納税 | 四半期申告・納税 | 年次確定申告・納税 | |
| 締切日 | 翌月20日 | 翌四半期の初月の月末 | 翌年4月末 |
駐在員が自身で行う年次確定申告・納税の締め切りは翌年4月末ですが、これとは別にベトナム現地法人が実施すべき年次確定申告・納税もあり、その確定申告期限は翌年3月末と、締切が異なる点には注意が必要です。
※ベトナム現地法人が実施する個人所得税の申告・納税については、HRコラム「個人所得税の制度と実務」をご参照ください。
本社が個人所得税を負担する場合の留意点
ベトナム国外所得に対する個人所得税は本社が負担するのが一般的ですが、本社はベトナム国外に所在するため、個人所得税を税務局に直接納税することは出来ません。そこで本社とベトナム現地法人で立替合意書を作成の上、ベトナム現地法人が立替納税して、後で精算する形をとります。
その他の留意点①
既に記載した通り、年次確定申告・納税の際は、ベトナム国外所得とベトナム所得を合算しまとめて手続きします。合算した所得に対して累進税率が課されるため、結果として追加納税が必要となるケースが多くみられます。
その他の留意点②
本社から駐在員の口座に給与を振り込んだ後、本社とベトナム現地法人で精算を行うケースでは、最終負担者がベトナム現地法人であることから、給与の振込時点を個人所得税計算の起算日として、フォーム05/KK-TNCNで申告を行う必要があります。また給与以外にも手当が発生する場合、或いはVISA取得費用、コンサルティング会社への個人所得税申告サポート費用をはじめとする会社負担の他のベネフィットがある場合には、これらも個人所得税の課税対象です。本社かベトナム現地法人どちらが負担者なのかを確認した上で、正確なタイミングかつ正確なフォームでの申告・納税することが重要です。